第一志望の傾向
令和4年3月の公立中学卒業予定者 (令和3年度現在の公立中学3年生) は、76,402名で、前年を3,411名上回ります。(男子1,885名増・女子1,526名増)。公立中学3年生の数は前年度に底をうち、増加しはじめました。令和10年度(現小学2年生が中学3年生になる年度)には約80,000名を超える見込みです。都立全日制高校の学科別に志望者数の前年比較をみると、普通科が約1,700名の増加、商業科が50名強の増加(女子は減少)、工業科が50名強の減少(連続減)、家庭科150名強の減少(35%減)、総合学科が80名強の増加、前年新設で注目された赤羽北桜は3学科とも反動もあり半減に近い状況です。こう見ると都立高校の志望傾向が高まっているようにも見えますが、これは前述のように中学3年生の人数自体が前年より多いためであり、割合としては減少しています。
都立全日制高校第1志望者の割合は連続して減少しているのに対して、私立全日制高校(国立・他県含む)第1志望者は連続して増加しています。13年前のリーマンショック以降、都立第1志望者の割合は70%台でしたが、5年前に私立志望者が増加し、翌年はその反動があるかと思われましたが、むしろそれ以降さらに私立高校志望の流れが進んでいます。要因は、東京都版の私立高校の授業料軽減の拡張策(実質授業料無償化の対象になる家庭年収の上限が760万円から910万円へ拡大)や、私立高校の入試相談制度(コロナ禍で早く合格を決めたい心理と結びつく)や私立通信制高校への評価の高まりにあると推測できます。
都立高校に関して詳しく分析すると、倍率が落ち着いている例として、小山台・小松川(男子)・板橋・足立西・本所などがあり、最近志望増や高倍率になっている例として、文京・江北(男子)・竹台・日本橋・深川(男子)・墨田川・晴海総合・北園・向丘(女子)・東・新宿など、また以前からの高倍率を維持している例として、三田・竹早・上野・足立・城東・江戸川・小岩・深川(女子)・紅葉川・南葛飾などが挙げられます。
普通科以外では、専門色がはっきりと伝わる学科や、時代の要請 (グローバル化・情報技術化・デザイン・美術・舞台表現・動物・環境系…)に即した学科、身につけた資格・技術・感性が自身の一生を充実させたり豊かにさせたりすると思える学科は人気があります。 例としては、国際・多摩科学技術・工芸(デザイン・グラフィック)・園芸(動物)・瑞穂農芸(畜産)・総合芸術(美術・舞台表現)などが挙げられます。一方で、商業科・工業科は依然として低倍率が続き、全入(志望者全員が合格)が予想される学校が数多くあります。
都立高校の今後の動向
中高一貫校は外部募集枠が2学級と少ないこと、附属中学で3年間学校生活を過ごしている内進生への意識など、志望が限定される要因があります。令和3年度に富士・武蔵、4年度に大泉・両国が高校募集停止します(白鴎は5年度に募集停止予定)。制服をリニューアルした学校は、特に女子の志望者に影響を与えます。 令和2年度に豊島・田柄・竹台・武蔵村山・美原が、3年度に大山が制服を変更しています。服装や頭髪等の生活指導を強化する伝統校は一時的に志望者が減りますが、学力向上策などの改革が伴って信頼が増せば、志望状況は回復の方向に向きます。
都立定時制単位制高校 (昼夜間定時制)は、生徒の多様性・不登校・学び直しへの対応が期待でき、居心地のよさなどもあり、中退率の低下にもつながっています。定時制の学費は全日制よりもかなり安価ですが、公立高校の就学支援金制度で、授業料についての差はなくなっています。
チャレンジスクールとして、小台橋(令和4年度に荒川商業を改編)や立川地区(令和5年度に多摩教育センター敷地)に新設されます。「好きなものを、好きなときに、好きなだけ」科目選択できるという合言葉を掲げており、普通科とは違う特色のある教育が期待されています。